コラム
事業再構築補助金申請の注意するべきポイントは?
事業再構築補助金をご存知でしょうか。新型コロナウイルス後の経済社会を支援するためにできた制度です。ここ数年でできた制度のため、まだまだ認知度は低いです。思っていた制度と違う、申請しても不備があって申請が上手くいかないケースが多発しています。注意点を知っていたら、思っていたのと違うや不備をなくせます。効率良く審査を通過させるためにも、あらかじめ注意点を知っておくとよいでしょう。本記事では、注意するべきポイントについて詳しく解説いたします。
目次
1事業再構築補助金の注意点
1-1事業再構築補助金は後払い制度
1-2認定支援機関の支援が必要になってくる
1-3申請者全員が採択されるわけではない
1-4申請するためには3つの要件全てを満たしていないといけない
1-5不動産や車両の購入は対象ではない
2申請する際に気をつけるべきこと
2-1書類の不備で審査に通らないケースが多い
2-2「事業計画作成における注意事項」に則った記載となっているか
2-3「審査項目」について、しっかりポイントを掴んで記載がされているか。
2-4単に設備投資をするだけの計画となっていないか
2-5実現可能性の高い事業計画書となっているか
2-6申請は電子申請のみ
2-7応募申請は1事業者で1回の公募につき1申請
3まとめ
1事業再構築補助金の注意点
まず事業再構築補助金自体の注意点をご紹介します。注意点を知っていたら思っていた制度と違うということはなくなるでしょう。注意点は下記の5つです。
1-1事業再構築補助金は後払い制度
まず事業再構築補助金は後払い制度です。国が交付する補助金では原則として後払いの仕組みです。補助金の申請はしたことがない方も多いため、申請して審査が通ってからすぐにもらえないことに気づく方も多いです。もちろん後払いのため、補助金が出るまでは自己資金を使用する必要があります。自己資金がなければ、銀行からの融資を受けなければなりません。補助金が出るといえど、事前に資金の準備が必要です。事業を実施してから、資金が足りないということがないように資金を準備しておく必要があります。
また事業再構築補助金は原則として補助金交付が決定した後の投資にのみ補助金が出ます。交付が決定する前の投資に関しては補助金が出ません。そのため、事業再構築補助金の交付決定が下りてから、設備やシステムの契約・発注等を始めるとよいでしょう。
ただし、例外もあります。「事前着手申請」を提出して承認されたら2021年(令和3年)12月20日以降購入契約(発注)等を行った事業に要する経費に関しても補助の対象となります。
1-2認定支援機関の支援が必要になってくる
事業再構築補助金は、自社だけで申請が行えるわけではなく、認定支援機関の支援が必要になってきます。他の補助金は事業者が単独で申し込むケースが多いですが、事業再構築補助金は事業計画書を経営革新等支援機関と策定することが必須条件です。経営革新等支援機関と協力しなかったら、申請できません。信頼できる認定支援機関を探し、採択に向けて一緒に事業計画書を作成する必要があります。
1-3申請者全員が採択されるわけではない
事業再構築補助金は申請者全員が採択されるわけではなく、他の補助金と比べて採択率が低いです。事業再構築補助金の申請者から見る採択率は通常枠と特別枠を合わせて約40%です。特に通常枠の採択率が最も低く、30%台です。他の補助金では50%以上が採択されているものもあるため、非常に厳しい採択率だといえます。
1-4申請するためには3つの要件全てを満たしていないといけない
申請にあたって次の3つの要件全てを満たしている必要があります。
(1)売り上げが一定割合以上減少していること
2022年4月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の売上合計高が、コロナ以前の同3ヶ月の合計売上高と比較して、10%以上減少していることが条件です【売上高等減少要件】。但し、グリーン成長枠、緊急対策枠についてはこの要件は課されません。
売上高に代えて付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)が一定以上減少している場合も申請できます。
(2)事業再構築に取り組むこと
経済産業省が示す「事業再構築指針」に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換等を行い、3~5年の事業計画書を作成することが必要です。
(「事業再構築指針」・・・https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/index.html)
(3)認定経営革新等支援機関と事業計画を策定すること
中小企業診断士や金融機関、税理士といった経済産業大臣が定めている認定経営革新等支援機関を利用して事業計画を作成する必要があります。補助を受ける事業は事業終了後3~5年で付加価値額の年率が平均で3%以上増加するか、もしくは従業員ひとり当たりの付加価値額の年率が平均3%以上の増加が実現できる事業計画が必要になってきます。
いずれか一つでも満たしていない場合は事業再構築補助金を申請できません。ここでの「コロナ以前」とは「2019年1月~2020年3月」までの期間を指しています。また連続した3か月である必要はないため、1月と3月などのように間があいていても問題ありません。自身で月を選択できるため、コロナの影響が少ない企業でも対象となるケースは多いのではないでしょうか。自社が対象となるかわからない場合は、顧問税理士や中小企業診断士に相談してみてください。
1-5不動産や車両、パソコン等汎用品の購入は対象ではない
事業再構築補助金で不動産(土地・建物)の購入や車両、パソコン等の購入を行おうとしている方もいるかもしれませんが、残念ながら補助の対象外となります。特に不動産は金額が大きいため、補助されると思って購入してしまうと後々大変です。きちんと対象であるかどうかを確認した後に購入することをおすすめします。
2申請する際に気をつけるべきこと
実際に申請するときに気をつけるべきことは下記の7点です。
2-1書類の不備で審査に通らないケースが多い
申請時に最も注意したいのが、事業再構築補助金は提出書類が多く、書類の不備で審査に通らないケースが多発していることです。第1回公募のときは約3,000件の不備があり、書類不備が多いと発表されたにもかかわらず、第2回の公募結果では応募件数20,800件のうち、書類の不備が2,467件もありました。第1回公募では全体の約13%、第2回公募では全体の約12%が書類の不備があったのです。書類不備が多いと注意があっても、不備が減ることはありませんでした。この数値は他の補助金と比較しても非常に多いです。
書類不備の原因としては必要書類が多いこと、認定支援機関側が申請に慣れていないために書類の把握をしていないことがあげられます。
初めての公募なら書類不備が多くても仕方がありませんが、既に第8回公募であるため、書類不備で審査に落ちるのは非常にもったいないです。
自信のない方は実績がある認定支援機関を利用することをおすすめします。
2-2「事業計画作成における注意事項」に則った記載となっているか
公募要領に記載のある「事業計画作成における注意事項」に則った記載となっているかも重要です。
また、会社名を事業計画書の1ページ目に必ず記載すること、各ページにページ数を記載すること、申請する事業再構築の類型について、事業再構築指針との関連性を説明することも求められています。
事業計画書は以下1~4の項目について、A4サイズで計15ページ以内(補助金額1,500万円以下の場合は計10ページ以内)での作成が原則となっています。
1:補助事業の具体的取組内容
① 現在の事業の状況、強み・弱み・機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性、事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)、今回の補助事業で実施する新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組について、具体的に記載することが求められています。
② 応募申請する枠(通常枠、大規模賃金引上枠、回復・再生応援枠、最低賃金枠、グリーン成長枠、緊急対策枠)と事業再構築の種類(「新分野展開型」、「事業再編型」、「業態転換型」、「事業転換型」、「業種転換型」)に応じて「事業再構築指針」に沿った事業計画を作成する必要があります。どの種類の事業再構築の類型に応募するか、どの種類の再構築なのかについて、事業再構築指針とその手引きを確認して、具体的に記載する必要性があります。
③ どのように他者、既存事業と差別化し競争力強化が実現するかについて、その方法や仕組み、実施体制など、具体的に記載することが求められています。
2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)
① 本事業の成果が寄与すると想定している具体的なユーザー、マーケット及び市場規模等について、その成果の価格的・性能的な優位性・収益性や課題やリスクとその解決方法などを記載する必要があります。
② 本事業の事業化見込みについて、目標となる時期・売上規模・量産化時の製品等の価格等について、記載する必要があります。
3:本事業で取得する主な資産
① 本事業により取得する主な資産(単価50万円以上の建物、機械装置・システム等)の名称、分類、取得予定価格等を記載する必要があります。
4:収益計画
① 本事業の実施体制、スケジュール、資金調達計画等について具体的に記載します。
② 収益計画(表)における「付加価値額」の算出については、算出根拠を記載します。
③ 収益計画で示した数値は、補助事業終了後も、毎年度の事業化状況等報告において伸び率の達成状況の確認を行います。
2-3「審査項目」について、しっかりポイントを掴んで記載がされているか。
公募要領に「審査項目」の記載があります。しっかりこの審査項目に触れながら、事業計画書を作成する必要があります。大きく以下のポイントで審査されます。
1.補助対象事業としての適格性
2.事業化点
3.再構築点
4.政策点
5.加点項目
足許で原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響を受けている事業者に対する加点など
2-4単に設備投資をするだけの計画となっていないか
単に新しい機械を購入したいとか、店舗を出店したい、のみの理由では、採択されにくい傾向にあります。なぜならば、そういった希望があるならば、通常の経済活動として、銀行に融資を申し込んで機械を購入したり出店すれば良いからです。本補助金を利用して設備投資する為には、本補助金が設けられた思想背景をしっかり把握する必要があります。
例えば、既存事業との関連性やシナジー効果をしっかり把握し、設備投資との関連性に触れる必要があります。補助金を利用して機械を購入することによって、新たな○○○といった効果が期待できる、その市場は競合が少なく参入することで一定の売上が見込める、その結果、当社の売上高、損益は○○○と○%の延びが期待できる、等の説明を合理的・論理的に分かり易く記載することが求められます。
2-5実現可能性の高い事業計画書となっているか
実現可能性の高い事業計画書となっているかも大事なポイントです。補助金を受けたいが為に「絵に描いた餅」の計画書では、採択されません。実際にご自分が新規事業を行うことができるのか、その結果、売上や損益が改善できるのか、を記載する必要があります。
その為には、新規事業を行う市場がどの程度あるのかを分析し、併せて競合先の分析等を通じて、しっかり実現可能性が採択官に伝わるように、事業計画書に盛り込む必要があります。
2-6申請は電子申請のみ
事業再構築補助金は紙ベースでの申請ができず、電子申請のみが受け付けられています。事業再構築補助金はすべて「jグランツ」という補助金の電子申請システムを通じて申請します。このjグランツから申請するためには「GビズIDプライム」を通じて、IDを取得する必要があります。しかし、現在電子申請の数が増えているためにIDの発行に2週間以上の時間を要しているケースが多数報告されています。申請受付前でもID発行を行えるため、事前にID発行の申請をする必要があります。
2-7応募申請は1事業者で1回の公募につき1申請
応募申請は1事業者で1回の公募につき1申請のみです。
不採択となった事業者は、事業計画の見直しを行った上で、次回以降、再度申請することもできます。
3まとめ
事業再構築補助金の注意点をご紹介しました。申請前に思っていた制度と違う、書類不備で申請できなかったなんてことがないよう、事前に注意点をよく読んでポイントを理解した上で申請してみてください。